無線通信の距離はどう決まる?電波の特性から分かる「届く距離」のリアルとは
携帯電話やWi-Fi、業務用トランシーバー、さらにはアマチュア無線や特定小電力無線まで、私たちの身の回りにはさまざまな無線通信が存在しています。こうした無線通信において、誰もが一度は気になるのが「どこまで電波が届くのか?」という距離に関する疑問です。
無線機の購入を検討している方、災害時の通信手段として無線の導入を考えている方、あるいは趣味としてアマチュア無線を始めたい方にとって、「通信可能距離」の知識は欠かせません。
本記事では、無線通信における電波の届く距離について、電波の種類や周波数、出力、環境要因など、さまざまな観点から詳しく解説します。理論と実際の違いを踏まえながら、無線通信の「距離の正体」を分かりやすくひも解いていきます。
電波はどうやって届く?通信距離の基本的な考え方
まず大前提として、無線通信に使われる「電波」は、空間を伝わって情報を運ぶ「電磁波」の一種です。電波は目に見えませんが、送信側から出た波が受信側に到達することで、音声やデータが届く仕組みになっています。 では、電波はどれくらい遠くまで届くのでしょうか? 通信距離を決める主な要素は、以下の通りです:- 周波数帯:使用する電波の種類(HF、VHF、UHFなど)
- 送信出力:送信機から出力される電波の強さ(ワット数)
- アンテナの性能と設置状況
- 使用環境:屋内か屋外か、障害物の有無、地形
- 気象条件:湿度、雨、気温差による影響
周波数帯による通信距離の違い
無線通信で使用される周波数帯は、用途や規模によってさまざまです。それぞれの帯域によって電波の特性が異なり、通信距離にも大きな差が生まれます。1. HF帯(3〜30MHz):短波
特徴は「電離層反射」により、地球の裏側にまで届く遠距離通信が可能なこと。アマチュア無線や国際放送などで使われています。山やビルに遮られても、反射によって通信できるのが強みです。 通信距離:数百km〜数千km以上(条件によっては地球全体)2. VHF帯(30〜300MHz):超短波
直進性が強く、地上波テレビや業務無線、FMラジオなどで使用されます。障害物があると回り込みは難しくなりますが、比較的遠距離でも安定した通信が可能です。 通信距離:数km〜20km程度(見通しが良ければそれ以上)3. UHF帯(300MHz〜3GHz):極超短波
ビルや壁を通りにくい反面、近距離で安定した高速通信が可能です。携帯電話やWi-Fi、特定小電力トランシーバーなど、多くの生活機器に使われています。 通信距離:数十m〜数km程度(障害物の影響大) このように、周波数が高くなるほどデータ量は多く運べますが、届く距離や回り込み性能は落ちていきます。目的に応じて帯域を選ぶことが、無線設計の重要なポイントとなります。出力とアンテナが距離に与える影響
次に注目したいのが「送信出力」です。電波を強く送ることで、理論上は遠くまで届かせることができます。 たとえば、同じUHF帯でも:- 送信出力10mWの特定小電力トランシーバー → 数百m〜1km程度
- 送信出力5Wの業務用ハンディ無線機 → 数km〜10km以上
- 高い場所に設置する → 見通しが良くなり、距離が伸びる
- 指向性アンテナを使う → 特定方向に電波を集中できる
- 増幅器(ブースター)と併用 → 効率的に信号強度を上げる


